【巻き戻しの空】
「あ、綺麗。」
見た瞬間、自然と言葉が
こぼれ落ちた。
この空は、まるで
早朝の空のようだ。
…そう、例えるならば
『時間が巻き戻された空』
不思議で、綺麗で
心地よい朝に
その場だけ巻き戻された
錯覚に陥るような景色だ。
「時間が巻きもどれば
私は何をするだろうか?」
そんな事を、ふと
考えてしまう景色でもあった。
でも答えは出なかった。
なぜなら時間が巻き戻る
必要性を今は感じなかったからだ。
もちろん、色々あった。
時には戻りたい…なんて
思う事はあった。
でも今は違う。
ただ、前へ前へ
少しでも進みたいし
多少は進んでいる、と
根拠のない不確かな思いが
心の、どこかにあるから
現状、私は時間を巻き戻して
やってみたい事が
思いつかないのだろう。
ーなる子ー